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  • Miyoko Shimura

完全無料の大学教科書


University of the People (以下 UoPeople) の興味深い高等教育モデルのひとつは、教科書や副教材を完全無償で生徒に提供していることです。



これは経済的格差が学びの機会の損失に関わらないようにするという創立の思想がベースとなっています。


200の国と地域に学生がいますので、1冊が30ドル程度のテキストであっても、先進国と物価が大きく異なる国の人々にとっては、到底手の届かない贅沢品になります。


物価の違いの大きさとはどの程度でしょうか。世界の統計をもとに、アフリカとアジアの国々の平均月収値を調べてみます。[1]


アフリカ

  • エジプト 250 USD

  • ナイジェリア 167 USD

  • エチオピア 78 USD

  • コンゴ民主共和国 45 USD

アジア

  • 日本 3,378 USD

  • パキスタン 106 USD

  • ミャンマー 105 USD

  • ネパール 99 USD

  • アフガニスタン 41 USD  


(すべて月収値、2020年)


平均月収が100ドル程度の国民からすれば、一冊30ドルの教科書は月収の1/3程度に相当します。


アメリカから高等教育を世界に普及させて、より良い世界を目指すという理念のもとでは、教科書代も決して無視できない存在です。


わたし自身の経験としては、この半年の期間でUoPeopleの教材にかかる支払いは1円も発生していません。



それでは、高等教育機関がなぜ生徒に教材を完全無償で提供することができるのでしょうか。


UoPeople公式ページから教材にかかる説明を引用します。[2]


UoPeople courses use Open Educational Resources (OER) and other materials specifically donated to the University with permission for free educational use. Therefore, students are not required to purchase any textbooks or sign up for any websites that have a cost associated with them (University of the People, n.d).

(訳) 「UoPeopleのコースでは、オープンエデュケーショナルリソース(OER)や、教育利用のために自由な許可を得て大学に寄贈された教材を使用しています。


そのため、学生は教科書の購入や、費用が発生するウェブサイトへの登録は必要ありません。」


 

OERとはオープン教材のことで、その多くはPDFやHTMLなどの形態でインターネット上で自由に配布されています。


このオープン教材については、英語圏のものが質、量ともに圧倒的に優れています。


世界のインターネット上での情報量のうち68%は英語で、2%が日本語です。[3]


日本語だけで検索できる情報量は、2%です。広大なインターネットの情報の海を泳ぎながら98%にアクセスしていないのだと思うと、少し勿体無い感じもします。


英語は発信する人が多い分、量が増えていくためその中で選別が行われていくので、必然的に質が磨かれていく傾向があります。


オープン教材として世界中に自分の著書を公開することは、大学や先生にとってプロモーション機会と考える方もいて、寄贈のひとつの理由となっているようです。(付け加えれば、宗教をベースにした寄付の文化も大きく貢献していると考えていますが。)



例えば、UoPeopleの統計学基礎でも使用している教科書はイスラエルのヘブライ大学のBenjamin Yakir教授からの無償提供によるものです。インターネット上で無料公開されており、下のリンクから全文にアクセスすることができます。[4]




経済的格差による教育機会の不均衡を是正するためには、オープン教材の普及が鍵になると思います。


普及といっても、無いものを新しく作るというよりは、既に世の中の色々なところにオープン教材がごろごろと転がっていると思います。


インターネットを毎日活用して便利さを享受する一方で、良質なリソースにアクセスする機会をどれだけ見つけられるかどうか。


または、積極的に外部から促すことで、アクセスの機会を与えられるかどうか。


安価な教育システムを形作るためには、これらが重要だと考えています。



Reference

[1] WorldData.info. (2021). Average income around the world.


[2] University of the People. (n.d.). Components of the study process.


[3] W3Techs.com. (2021, November 29). Usage statistics and market share of

content languages for websites.


[4] Yakir, B. (2011). Introduction to Statistical Thinking (With R, Without Calculus).

Jerusalem, IL: The Hebrew University of Jerusalem, Department of



Miyoko Shimura | 志村 美代子

LinkedIn: @miyoko-shimura

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