- Miyoko Shimura
アフリカと停電と私
先日、公開した「テクノロジースカラシップに合格した専業主婦の話」という投稿をシェアして頂いたことに感謝しています。
「バイタリティがありますね」と個人的に感想を頂きました。
エモーショナルなひとりの人間ですので、いつでも鉄のように強靭ということは無く落ち込むこともあります。
社会において情感の豊かさは単に邪魔であろうと思い、無くすことで克服できないだろうかと考えていました。
最近、ナイジェリアに住むUoPeopleの友人からひとつメッセージを受け取りました。
「あなたがグループチャットでみんなを勇気づけ、インスパイアしてくれることが大きな励みになっています。
正直なところ、友人やあなたのような存在がいなかったら私は勉強を続けていなかったかもしれない。メンターとして慕っています。」
その言葉を見て、自分の感情表現は弱みであり強みであり、表裏一体であったということに気付いたのです。
エモーショナルな面を完全に隠してしまうことは、自分の人生にとって最良の方策なのだろうかと初めて考えることになりました。
デザイン・ウェブサイト作りや文章を綴ることにおいて、感情が豊かであるからこそ創造が楽しくなります。
直接対面したことが無くても、人の機敏が少し読めることがあります。時々その情報量の多さに戸惑うので、一人で時間を過ごすことを選んだりもします。その代わりに傾聴が得意で、メンタリングに携わってきました。
そんなことを考えていると、大学の同級生のWhatsAppグループにメッセージが流れてきました。校舎を持たないオンライン大学なので、グループチャットには世界中の生徒が参加しています。
西アフリカのとある国の友からの話。
オンラインでの最終テストの最中に大規模な停電に見舞われたそうです。ネットワークの復旧も間に合わずタイムアウトしたため提出できないまま制限時間が終了。
テストのスコアが0点になってしまったそうです。
毎週提出するレポートや確認テストの配点が7~8割程度だったので、最終的な成績評価は70点になったそうですが、彼は本来の実力が出せず悲しんでいるようでした。
Ethical Hacking (エシカルハッキング) 技術者養成の奨学金を手にしてコースを続けながら、オンラインでも大学に通っている優秀な友人です。停電さえなければA評価だったのではないかと思うのです。
その話を受け、クラスメートから「God bless you!(あなたに神の祝福がありますように)」の声が次々に上がりました。
不運に見舞われた彼に世界中の友人たちから愛のメッセージが届きます。
現在でもアフリカや南米では停電やネットワークの不安定が頻発しています。
そんな最中にでも「停電した真っ暗な部屋の中でPCを開いてレポートを書いている自分」の写真をシェアして楽しんでいる学生たちがいて、イベント的に過ごしている様子を見ると少し安堵します。
一方で、発展途上国において持続的で安定したインフラ実現のために私たちのような先進国の人間が解決すべき問題が転がっていることも認識するのです。
少し前に私が書いた記事がバイタリティがあるように見えたかもしれないのですが、そうでもありません。
ただただ、イギリスの私の部屋が頻繁に停電していないことについて自分の境遇をふと想います。
自分と、外部環境で失敗した他の大陸の優秀な友人との結果の比較に大きな意味が感じられなくなりました。実力云々というよりもスプーン上のさじ加減の運命の違いにも思えたのです。
さじ加減次第で今日はちょっとしょっぱくなったスープ、のような偶然性です。
だから成功も失敗も表裏一体であると思うと背筋がちょっと冷たくなるのです。成功も、失敗も、誰かの視点の一時的な借り物かも知れません。
オンラインだからこそ見えた世界地図があります。
どうか西アフリカの大地に立つ彼に祝福がありますように。
そうすこしばかり祈りながらチャット画面を閉じて日常に戻るのでした。
やっぱりまだ、私の部屋は停電していない。

Miyoko Shimura | 志村 美代子
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